熟練の技が光るメイドイン東京のニットメーカー (株)青山良

つくるのいえのちょうど向かい、浅川沿いにニットメーカー(株)青山良があります。ここでは、ブランドから依頼されたデザインに応じ、ニット製品を制作しています。

創業は昭和50年。現在は青山良次さん(左)と、青山アツコさん(右)が2代目として会社を経営されています。

「編みもの」と聞くと手芸の編み物をイメージしますが、ニット製品は機械で編むことが大半です。複数の糸を機械の端から運ぶことで、様々な柄や組織を表現することができます。

工場では、約30年前に作ったド派手なニットをたくさん見せてくださいました。柄や色ごとに編み組織を変えなければいけない、作るのに難しいニットも数多く残っていました。

アツコさん曰く、上の写真のようなニットは「まだまだこれは序の口」だそうです。かつては、これ以上にド派手なニットを作っていたそうです。

青山さんでは、他では編みたがらない手間のかかる柄のニットを作っています。30年前のファッションを貴重なアーカイブから覗けるので、とてもわくわくします。

編みの工程は機械を使用しますが、仕上げは一つひとつ人の手が入ります。編み上がった生地の糸処理から縫製、リンキング、幅を揃えるアイロンがけまで、全て工場内で手作業で行なっていました。

百貨店やブランドに卸すため、ニット一枚のみの生産はありえません。何十枚、何百枚と同じ製品を作る必要があります。手作業で全ての糸端やサイズが統一されたニット製品を作るのが、当たり前ではないのです。

「ここをヒョイっとやるのよ」と、糸処理のやり方を教えてもらいましたが、速すぎてカメラがブレてしまうほどです。

青山さんの工場では、編みあがったニットにステッチを入れていく作業も、全て手作業で行なっています。

何十枚と同じニット製品を作るため、ステッチを入れる位置も全て同じにしなければいけないそうです。編み目を端から上下左右一つ一つ数え、何十枚もの製品に対し同じ大きさ、向き、位置に狂い無く次々とステッチを入れていきます。出来上がった製品を重ねても、全て同じ位置にぴったりステッチが合っていました。

従業員は総勢8名。その全員が技術者であることが会社の誇りだと、青山さんはおっしゃっています。手間暇かけたニット製品を製造する工場は、世界でも少なくなっています。そんな中青山さんは、複雑な設計や熟練された人の手によりメイドインジャパン、メイドイン東京の製品が日々生まれるメーカーです。貴重な技術者が上質なニット製品を作っている工場が八王子にはあります。

text:森口理緒